山口様:当社は1912年創業の教育分野に一筋の出版社です。 主に教師向けの教育専門書や、学校で使われる資料集や問題集などの学習参考書を出版しております。
社会環境の変化、教育課程の改正などで、教育現場は目まぐるしく変化しております。
私たちは書籍や参考書の出版を通して、未来を担う子どもたちのために、教育に携わる人々をサポートし、教育や学習の質の向上に努めております。
少しでも多くの子どもたちの学習が深められるように、日々試行錯誤しながら学習教材の企画・出版に励んでいます。
明治図書出版様
お話いただいた
小林様(左)・小菅様(中央)・山口様(右)
COCOAR(ココアル)の導入を検討することになったきっかけを教えてください。
山口様:私たちの部署は小学校・中学校の理科の教材の企画をしております。
「理科離れ」という言葉があるように、近年は子どもたちの理科に対する興味・関心が低下していると言われております。 その上、学校現場では若い理科教師の方々を中心に、理科資料集を活用せずに授業を行うケースが増えていることを感じていました。
皆さんもご存知の通り、理科は観察や実験を通して学習する場面が多く、視覚・聴覚・触覚で理解することも多い教科です。資料集には、教科書には載せきれない写真や図解を、多く掲載することができます。ですので、理科を学習するにあたり、資料集は学習の理解度を深めるのに、非常に役立てることができます。
再び、理科資料集の有効性を認識いただくために、より充実した内容・コンテンツにすることはもちろん、他社にはない新しい取り組みをする必要がありました。
企画メンバーで話し合ったところ、文字と図解だけでは伝えられない動きや臨場感を見せることができる動画を活用するのが良いのではないかという案が出ました。そのなかで、動画と資料集の誌面がリンクしたら、よりおもしろい良いものができるのではないかというアイディアが生まれました。
このアイディアの実現のために、動画と誌面をリンクさせるための情報を集めていたところ、「AR」という技術があることを知りました。これが「AR」を検討し始めたきっかけとなります。
小林様:「AR」について詳細な知識があったわけではありませんので、資料集にも「AR」技術が活用できるのではないかと、 漠然と考えているだけでした。そこで情報収集のために「先端コンテンツ」という展示会に行ったのが、「COCOAR(ココアル)」を知るきっかけでした。
ARを導入した理科資料集
資料集誌面とAR
COCOAR(ココアル)導入の決め手になったポイントがありましたら教えてください。
山口様:COCOAR (ココアル)導入の決め手になったポイントは、
・価格と機能のバランスが良かったこと
・他社ARサービスに比べて、認知度が高く汎用性があったこと
の2点が大きかったですね。
資料集にARを実装する企画は、当社では初の試みとなるうえ、同業他社の事例でもARを活用したケースはありませんでした。教育現場は保守的な側面がありますので、そもそも先生方や子どもたちに受け入れられるかという点も、正直不安がありました。
さまざまなARサービスを調べて感じたことは、
■スターティアラボ(現:クラウドサーカス)
・・・比較的安価でコンテンツ制作が容易
■スターティアラボ(現:クラウドサーカス)以外のARサービス
・・・高価でコンテンツ制作の難易度がやや高め
という印象でした。
当社としては先生方のご意見を反映させるために、容易にコンテンツの差し替えができたり、比較的コストを抑えてスタートできる「COCOAR(ココアル)」が魅力的 でした。
また、アプリダウンロード数が一番多いということは、多くの人に受け入れられているということですので、安心材料になりましたね。
小林様:そうですね。学校を通してご購入いただく資料集ですので、アプリダウンロード数が一番多いことに加え、 アプリ自体の評価が比較的高めだったことも非常に好印象でした。やはり、汎用性が高いだけではなく、ある程度信頼性のあるアプリでないと、 アプリダウンロードを推奨しづらくなってしまいますからね。
AR動画キャプチャ
ARコンテンツ
はめ込み写真が撮影できます
COCOAR(ココアル)導入までに大変なことなどありましたら教えてください。
山口様:ARとQRの違いを明確にし、社内に説明するのが大変でした。
誌面からリンク先の動画を見せるだけであればQRコードでも実現させることが可能です。 ですから、コストを掛けてまでARの企画を採り入れるべきなのか、本当にARでないとできない企画なのか、社内で検討に検討を重ねました。
小林様:今思えば、私たち自身も「ARでないとだめな理由」を考える、とてもいいきっかけになりましたね。
若干話はそれますが、私たちは理科資料集には2つの目的があると考えております。 1つめは、先生方が授業をスムーズに進める手助けをすること。2つめは、生徒の皆さんが理解を深めたり、興味を持ってもらったりするきっかけづくりをすることです。 ですから、先生方にとっては「使い易い」、生徒さんにとっては「楽しめる」資料集づくりを心がけております。
実際にアンケートや現場の声を聞いてみると、先生方が生徒さんへ動画で見せたいものと、生徒さん自身が動画で見たいものには微妙な差があることがわかりました。 例えば、先生は、誌面と口頭だけでは説明しづらい「天体の動き」や、危険がともなうため実際には授業で行えない「器具の誤った使い方」などを見せたい と考えているのですが、生徒さんは、ダイオウイカの大きさやチーターの走り方のようすなど、実際に学校や授業では体験できないようなことを見たいと考えているように感じます。
そこで、「授業で使える」という要素を持つ動画・アニメだけではなく、「生徒さん自身が楽しめる」という要素を持った動画・アニメの企画も行いました。
新しいコンテンツはどのようなものなのでしょうか?
小菅様:ARコンテンツには、動画だけではなく、写真が撮れるコンテンツも企画しました。
動画は、「実験器具の誤った使い方」や「天体の動き」、「イカの解剖」など先生方が見せたいコンテンツを作製しました。
写真が撮れるコンテンツでは、チーターの大きさや速さを体験できたり、人体の構造のはめ込み写真を撮ることができたりと、 エンターテイメント色が強く楽しめるものを用意しております。
ARコンテンツ紹介のチラシ(右)
COCOARを採用した結果や成果はいかがでしたか。
山口様:先生方や生徒さんの手元に届くのは、2017年4月以降なので、どのような反響があるのかはまだわかりません。
今回の改訂版を作るにあたり、私たちも楽しみながら作成しました。作り手のわくわく感や楽しい気持ちが生徒さんへ伝わり、今までよりも理科に興味を持ってくれたら嬉しく思います。
小菅様:リリース前に社内で営業部向けに商品説明会があったのですが、そのときの反応は上々でした。 他社の教材との差別化が説明しやすくなったと思うので、部数が伸びることを期待しております。
リリース前ということなのでドキドキしますね。現段階での懸念点や不満などありますか。
小林様: 今回、ARコンテンツ用の動画は、従来のような映像をただ見せるだけではなく、クイズ形式を採り入れるなど、一味違った学習を深める工夫をしております。 この違いを伝えたいのですが、チラシや口頭だけでPRするのは難しいなと感じています。やはり実際に見ていただくのがいちばん良いと思うのですが・・・。
COCOAR(ココアル)を活用した今後の展望があれば教えてください。
山口様:ARを活用した取り組みは今年が初めてです。今期の結果を踏まえて、コンテンツの刷新や改善をしていきたいです。
昨今、教育現場ではICT化に早急に対応するよう文部科学省から指示が出ております。
ですが、ソフト・ハードの両面から、教育現場ではICT化はなかなか進んでいないのが現状です。
ただICT化に対応するために、授業や学習の内容がICTに合わせるかたちになってはいけません。 それこそ、鉛筆やノートを使うように、デジタルを使用するべきだと考えております。 私たちはシステム会社ではありませんが、今回のAR導入のように教育現場の質の向上の一端を担うつもりで、良い教材を出版し続けていきたいと思います。
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