蟻田様:「当社は、プリプレスから印刷、製本までを行う総合印刷会社です。 紙メディアと連動するデジタルコンテンツビジネスにいち早く取り組み、組版データから電子ブックと印刷物の同時発売も数多く手がけております。
経済産業省の「コンテンツ緊急電子化事業」においても、電子ブックの品質の高さが認められ、多数のタイトルを電子ブック化しました。
ARサービスを検討することになったきっかけを教えてください。
蟻田様:当社は総合印刷会社ですが、書籍のデジタル化には早くから取り組んでいました。
1990年代後半より、組版をアーカイブ化するために電子化に取り組み始めたのが、デジタル化ビジネスを本格的にスタートしたきっかけです。
まだ世の中に電子書籍という言葉も普及していない2004年頃から、PDA(電子辞書)向けの電子書籍コンテンツを制作し始め、その後の電子書籍普及の波に乗り、当時はまだ請け負える会社が少なかったオーサリング制作を担ってきました。
おかげさまで、その数年後に訪れたケータイ小説・ケータイコミックの大ブームで制作会社としての地位を確立することができました。
その流れで、3年ほど前、画像に埋め込まれたIDをアプリで読み込むと動画が流れるといった、ARと似た効果を持つ「電子透かし」に興味を持ちました。これを販促ツールに活かせないかと考え調査を始めたのですが、特許絡みでコストが高額になる上に、自社で制作ができません。1冊の書籍に数箇所埋め込むと、それだけで数十万円にもなってしまうため、版元さんからもOKが出にくいだろうという結論に至り、採用を見送った経緯がありました。
こういった技術がもっと自由に制作できて、安価で提供できるようになれば面白いだろうなという考えが、ずっと頭の片隅にありました。そこにCOCOARが登場したのです。
COCOARのどんなところに魅了されたのですか?
宮崎様:ARマーカーとして任意の画像を登録でき、その画像をスマートフォンなどで読み取れば、リンクしたコンテンツを再生したりサイトを起動させたりできること、マーカーとリンクさせるコンテンツも任意のURL、動画ファイル、音声ファイル、その他画像データ、テキストファイルなどを自由に設定できる点ですね。
一度設定したコンテンツが、クラウド上の管理画面からいつでも差し替え可能な点もメリットに感じました。
ARツールはたくさん出ていますが、自分たちで制作できるものというと、ほとんど見当たりません。システム会社に制作を依頼するのではなく、自社で制作ツールとして保有してお客様に技術を提供したいと考える当社に、COCOARはマッチしました。
私たちは印刷会社ですので、ARを切り口として紙の印刷を受注することが最終目的と考えています。ARはあくまで紙の印刷物に付加価値を与えるもの。そういう観点から導入費用を勘案しても、COCOARはリーズナブルでした。
月刊ショパン別冊 うたの雑誌「ハンナ」
実際に運用してみて、感想や効果などがあれば教えてください。
蟻田様:やはり、自社でARを制作できるという点が重宝しています。
サンプルも自由に作れますし、自分たちのアイデアが花開くのを助けてくれるツールだと感じます。
宮崎様:営業の際に、お客様に合わせた個別のコンテンツでサンプルを作り、ARの実際の動きを見ていただきます。そのまま使えるほどに完成度を高めたサンプルを持参することで、リアルな運用イメージを持ってもらえます。ここに大きなメリットを感じています。
商業印刷に向けた販促ツールとしての提案の反応は非常に良いです。
【提案例】
霊園のチラシ:
●墓石の詳細情報を閲覧できる
●霊園の様子が動画で流れる
●店舗の地図が開く
●メーカーのWebサイトへ飛ぶ
出版業界へも、読者サービスとしての提案を積極的に行っています。
2013年4月に創刊された音楽雑誌「ハンナ」でCOCOARが採用されました。
ARマーカーにスマートフォンをかざすと、
・音楽や演奏映像が流れる
・演奏者のFacebookや、公演詳細情報掲載ページへ飛ぶ
という使い方をしています。
COCOARは、DTP工程は今までとほとんど同じまま、コンテンツさえ用意すれば良いので、取り入れやすいツールだと思います。アプリの使い方説明を表紙などに追記するくらいです。
すでにある画像に対して後付けでマーカー設定を行うことも可能ですし、印刷費もほぼ変わりません。
オーサリングソフトも、操作がシンプルで使いやすいです。
COCOARを活用した今後の展望があれば教えてください。
宮崎様:引き続き、印刷物に付加価値を与えるツールとして活用していきたいと考えています。
COCOARは、QRコードなどと違い任意の画像が利用できますし、クラウド上でコンテンツ入替えが可能なため、日替わり、週替わりで表示させる内容を変えるといったことも簡単に行えます。
これを活かして、自己啓発系の本の投げ込みチラシにマーカーを設定し、セミナーの招待券や登録ページのURLにリンクさせたりする方法を考えています。書籍は雑誌と違い、長期間に渡って販売されるものですが、クラウド上でのコンテンツ入替えが可能なため、読者はいつ購入しても最新のセミナー情報が得られるという仕組みです。
販促物では、チラシのマーカーから表示される通常コンテンツを、キャンペーン期間のみ割引情報に切り替えるというふうに使えます。チラシにキャンペーン開催期間を明記する必要がなくなるわけです。
マーカーは必ずしも紙でなくても良いので、企業ロゴの入ったグッズにスマホをかざして利用するという案も出ています。
マスメディア以外にも、建設業などで設備機器そのものをマーカーに設定し、取扱説明書と連動させ、メンテナンスに活用するという方法も考えられます。お客様に合わせ、さまざまな提案が可能になるので、アイデア次第で活用幅はどんどん広がりますね。
蟻田様:デジタルメディアをうまく使い、お客様の持っている情報の価値を高められるような提案をしていきたいと考える上で、 COCOAR は、最適な手段の一つだと思います。
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